一人で抱え込まない。みんなで利用者さんの生活を考える
――私たちの「壁打ち」と情報伝達
私たちの職場では、利用者さんについて職員同士で「壁打ち」をすることがあります。
朝礼で、
「昨日、○○さんの様子がいつもと少し違ったんです」
「最近、ご家族との関係はどうですか?」
「この方、今後どんな生活をしていくのがいいんでしょうね?」
そんな会話が自然に始まります。
夕方、訪問や支援から戻ってきた職員が、
「ちょっと相談していいですか?」
と声をかけることもあります。
答えを教えてもらうためではありません。
「私はこう感じたんですが、どう思いますか?」
と、お互いの持っている情報や経験を出し合いながら、一緒に考えていくのです。
利用者さんのことを、一人で理解するのは難しい
医療や介護の現場では、利用者さんから直接お話を聞けるとは限りません。
認知症がある方や、コミュニケーションを取ることが難しい方もいます。
「本人はどうしたいのだろう?」
「この人にとって、どんな生活が幸せなのだろう?」
と考えても、ご本人から答えを聞くことが難しい場合があります。
そんなとき、一人の職員だけで考えるのではなく、関わっている職員がそれぞれの視点を持ち寄ります。
看護師からは身体状態や医療面について。
ケアマネジャーからは生活全体や家族との関係について。
相談員からは、ご本人との日々の関わりや社会とのつながりについて。
それぞれが持っている情報を合わせることで、一人では見えなかった利用者さんの姿が見えてくることがあります。
「誰が何を相談すればいいか」を知っている
これは、TMS(トランザクティブ・メモリー・システム)という考え方に近いです。
「自分がすべてを知っている対応する必要はない。誰が何を知っているかをやっている」
ということです。
例えば、
「医療面なら看護師に聞いてみよう」
「ご家族とのこれまでの経緯ならケアマネジャーに聞いてみよう」
「普段の様子なら、長く関わっている相談員に聞いてみよう」
というように、職員それぞれが持っている知識や経験をつないでいきます。
私たちが日々行っている「ちょっと相談する」「みんなで考える」という時間が必要で在宅の楽しみだと考えています。
デジタルだからこそ、つながる情報
現在は、チャットや記録など、デジタルを使って情報を共有することもできます。
訪問した職員が、
「今日の訪問で、いつもと違う様子がありました」
「ご家族からこんな話がありました」
と記録しておけば、その場にいなかった職員も後から確認することができます。
デジタルの良さは、**「残せること」「伝えられること」「後から振り返られること」**です。
一人の職員が持っていた情報を、チームで共有できる情報に変えていく。
これは、多職種で利用者さんを支援するうえで大切な役割を持っています。
それでも、顔を合わせて話すことも大切
一方で、私たちはデジタルで情報を共有するだけでは十分ではないと考えています。
実際に顔を合わせて話すと、
「そういえば……」
と、記録には書かれていなかったことが出てくることがあります。
職員の表情や声のトーンから、
「それ、少し気になっているんじゃない?」
と別の職員が気づくこともあります。
一つの情報から、
「それなら、こういう方法もあるんじゃない?」
と話が広がることもあります。
デジタルは情報をつなぐことに向いている。
顔を合わせた会話は、考えを深めることに向いている。
私たちは、どちらか一方ではなく、両方を大切にしています。
「一人で抱えない」ことが、利用者さんの支援につながる
医療・介護・福祉の仕事では、一人で判断しなければならないように感じる場面があります。
でも、本当に大切なのは、一人ですべての答えを出すことではないのかもしれません。
「ちょっと相談してみよう」
「私はこう思うけど、どう思いますか?」
と声をかけられる環境があること。
そして、それぞれの専門性や経験を持ち寄って、
「この人にとって、どんな生活が一番いいのだろう?」
と一緒に考えられること。
私たちは、そんな日々の小さなコミュニケーションの積み重ねが、利用者さんのより良い生活を支える力になると考えています。
一人で抱え込まない。
一人の正解にしない。
みんなで考える。